風の歌を聴きながら

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HYUKOH オヒョク インタビュー(GQ Korea) 【和訳】

MEN OF THE YEAR 2019 – 오혁 | 지큐 코리아 (GQ Korea)

 

2019.11.21

 

MEN OF THE YEAR 2019 – オヒョク

オヒョクは最後まで行く。意味のないものは持たず、好きなものだけで満たして。

 

 

今年のバンドHYUKOHの移動経路を合計すると地球半周以上になるのではないかと思います。

1年が本当にあっという間に過ぎていった気がします。アメリカ、スイス、ロシア、先週行ったベトナムまで。航空マイレージがいつもたくさん溜まっています。公演をしながら刺激をたくさんもらった年でした。体力的に大変ではありましたが。

 

HYUKOHを初めて見る観客の前で公演をするというのはどんな気分ですか?

むしろそういう慣れない状況が楽しかったです。始めは前の数列しか観客がいないのですが、いつの間にかスタンディング席がいっぱいになっている様子を見るとすっかり新しい心持ちになります。海外では僕たちの知名度が高くないので、だいたいフェスティバルの最初の方の出番に配置されます。以前オランダで開催された「ローランドフェスティバル」でJorjia Smithと同じ時間帯、違うステージで公演をしました。幸い途中で出ていく人はほとんどいませんでした。僕たちにも希望があるな、悪くないんだな、と思えました。

 

海外のミュージックフェスティバルに行くと、自分たちも観客としてそのフェスティバルを楽しむ機会となると思うのですが、オヒョクが選ぶ今年の一番の公演が気になります。

コーチェラ・フェスティバル」で観たTame Impalaのステージです。なんというか、雰囲気も価格も空間も全てがちょうどいい食堂で美味しいカレーを食べた気分でした。店を出て「本当によく食べた」という言葉が自ずと出てくるような。

 

全世界のミュージックフェスティバルを巡回していると、必ず再会する人もいますか?

blood orange、Mac Demarcoはどこに行ってもよく会いますね。僕たちは何度か日程が被っていたようです。会えば元気にしていたかと挨拶もするし、お酒を飲んだり公演を一緒に見に行ったりもして。Mac Demarcoはよく会うには会いますが、僕たちとバイブがそこまで合うわけではないです。なんというか、おじいちゃんのような感じがあって。

 

2020年にもアジア、ヨーロッパ、北米など全19ヶ国、42都市を回るツアーをするというニュースが出ました。絶えず外に出ていこうとする理由があるのですか?

アジアだけでなく、西側の諸国にいる人々にまで僕たちの音楽がしっかり受け入れられる時代が早く来たらいいなと思います。今はまだ僕たちの音楽は主流ではなく、代替音楽のうちの一つのような感じなんです。どこの国どこの都市であれ、いい音楽を探して聴いている人々ともう少し近づきたいです。もうすぐ発売される新しいアルバムがそんな役割をしてくれたら嬉しいです。

 

まだ情報が解禁されていませんが、どんなアルバムですか?

メンバーと妥協なく、良いものだけを詰め込みました。「このくらいならいいだろう」と満足せず、良いものが出てくるまで追い込みました。意味のないものは全て切り捨てようと努力しました。理由がないなら未練なく捨てました。可能な限り単純に空にしていく作業でした。曲に骨組みがあるとすれば、その中にあって然るべきものだけを残したアルバムです。

 

そのように切り捨てようとした理由はなんですか?

最近の音楽は聴いていると耳が疲れてきます。だから長時間聴くのが難しいです。人々が「レトロ」と口々に言うのもそういう音楽に対する疲労感なのではないかと思います。過去の音楽を恋しがってその当時に戻ろうとするのも同じ理由でしょう。服に例えると、今回のアルバムはスーツでも道着でもユニフォームでもない、普段着の感じに近いです。何かこうカッコつけるのではなく、馴染みのある服。

 

HYUKOHは音楽と同じくらい視覚的な部分が重要なバンドです。

誰かはまだ教えられませんが、今回も一緒に作業してみたかった人を訪ねてイメージと映像の作業をしています。

 

前回のアルバムでもFrank Lebonと「하늘나라 Sky World」のミュージックビデオを作っていましたよね。そのような人たちとはどうやって人脈を作っているのですか?

人によって違いますが、知人を通して僕が知り合えるような人であれば直接連絡をします。Frank LebonはDoBeDoというコレクティブ集団に所属しています。交流のあるフォトグラファーがDoBeDoのメンバーなので連絡先を聞きました。フランクにアルバムを送ったんですが、「하늘나라 Sky World」の映像を作りたいと向こうから先に連絡をくれました。僕は「LOVE, YA!」という曲でフランクと作業をしたかったんですが、結局そのミュージックビデオはフランクのお父さんが撮ってくれて。ほぼ家族経営事業みたいな感じです(笑)

 

二人の監督はどんな案を送ってきましたか?

フランクは手書きのドローイングを送ってくれました。マーク(フランクのお父さん)はロンドンにいる知人の家を見学させてくれて、ここではこれを撮って、こっちではこれを撮る、と口で説明してくれました。そのあと冗談で、僕たちが契約金を支払ったおかげで家を修理することが出来た、ありがとう、と言ってましたね。二人ともとてもいい人で、一緒に作業をしていてとにかく雰囲気が良かったです。僕は運が良かったんだと思います。二人と一緒に働いているメイクアップアーティストやスタイリストも昔どこかのマガジンで名前を聞いたことのあった人たちで、実際に会ってみたら実力も卓越していますがみんな性格が愉快でした。だから何をしても楽しくて、たくさん笑っていました。

 

それでも頭の上に山型に盛り上がった芝を被るのは、鏡を見て衝撃を受けたんじゃないでしょうか。

実際大変でしたね。あの日はその扮装をするのだけで4時間以上かかりました。頭に載せた芝がすごく重くて、後から首も痛くて。それでも時間もお金もかけて新しいものを作るのだから、その瞬間を楽しみながらやりました。

 

ソウルにいる時間が絶対的に少なくなったと思います。新しいアルバムの作業もロンドン近郊で行ったと聞きました。

リアルウィールドスタジオで録音をしたんですが、イギリス3大スタジオと呼ばれるうちの1つです。ロンドンから車で3〜4時間の距離にあるBathという都市の隣にあります。浴槽はこの都市に由来する単語だそうです。録音にだけ集中できるように宿泊施設も備わっていて、食事もシェフが全て作ってくれてラクに過ごせました。起きてから寝るまで音楽にだけ集中できる場所です。近くに小さい湖もあって、行き詰まったら散歩もすることが出来ます。ベルリンで経験出来なかった新しい機材も使うことが出来たのが一番良かったです。最近思うのが、バンド音楽をしているということ自体が、旧式の、もしくはアナログの機材のようだなと。必要ないのにあえて使っているんです。好きだから。アナログ機材で音楽を作っていると、そこでしか感じられない暖かさがあります。じわじわとしたサウンドから出てくる。

 

これまで発売した<20>、<22>、昨年発売した<24>まで全て6曲収録されています。

実はわざと合わせたっていうのはあります。4はちょっと少なく感じるし、5はなんだか誠意が足りなく見えるし、6が一番足りないものがない感じの数字です。なんせ音楽を消費するスタイル自体がずっと変わってきているので、正規アルバムという形態が以前よりも難しく負担だなという思いがあります。正規アルバムを念頭に置いてはいるけれど、どうやって発売するかについてはまだ悩んでいます。

 

以前のインタビューを見ると、不安がオヒョクを動かす原動力のように見えました。時間があってもじっと休むことが出来ず、不安で働いて。

作業の成果物に対して最後まで食い下がる行為自体が、論理上では必要ない過程だということを僕もよく分かっています。そういうディテールを掴もうと必死になる理由は、確実に音楽を聴く人も感じられる部分だと思うからで...即座に気付けるようなものではなくても、聴いてみると確実に違うんです。最終的な成果物に対して自ら納得できる検証が必要だと思います。そうするために自分の中で検閲みたいなことをやり続けて。根気よく間引くんです。聴きやすくなるまで。

 

バンドHYUKOHがテクノのような新しいジャンルの音楽を発表する可能性もありますか?テクノが好きで家でひとり聴いたりもすると聞きました。撮影現場に同行したマネージャーが、予告編みたいな感じで「Techno」と書かれたTシャツを着ていたので聞いてみました。

作ってある曲がいくつかあることにはあります。時々、人間の感情が感じられない電子音楽を聴きたいときがあるんです。歌詞も聴くのが嫌でインスト曲も飽きたらテクノを聴きます。そうして曲を作ったりもします。

 

ベルリンにいたときに記憶に残っているクラブはありますか?

普段は家で一番よく音楽を聴きますが、本当に行くに値するクラブ、例えばBerghainのような場所には行きましたね。入場するのが大変なことで有名で、かなり緊張していたんですが運良く入ることが出来ました。5時間も雨の中待ったんですよ。行ってみたら全世界1位のテクノクラブである理由が分かりました。

 

アルバム<24>のサブタイトルであり、インスタグラムに長いこと書かれている'How To Find True Love And Happiness'に対する答えは未だに探し中ですか?人生の大きな幸せではなく、小さな幸せは何ですか?

周りの人々、友人たちが側にいると感じる時、そういう気分になります。僕たちは普段から「ファン」という表現をあまり使いません。僕はその方たちもみんな友達だと思っています。みんな一緒に歳を重ねていって、つまるところ僕たちは同じ時代を生きています。音楽それ以上のものを共有できたら嬉しいじゃないですか。僕たちが一生懸命悩んだものを一緒に共有したいです。「愛と幸せを探す」という言葉は陳腐な表現ですが絶対的でもあるじゃないですか。HYUKOHの音楽がそういう質問に対して考えてみる機会になったらと思います。答えを提供することは出来ないですが、それでも探してみよう、と言いたいです。

 

 

<終>