風の歌を聴きながら

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Woo WonJae ウウォンジェ Black Out(cashmere journal)【和訳】

우원재의 점, 우원재의 Black Out – Cashmere Journal | 캐시미어저널

2020.12.23

 

ウウォンジェの点、ウウォンジェのBlack Out

 

イウファンは韓国現代美術の分野において、最も頻繁に名前が挙がる作家のうちの一人だ。彼が画幅に点をひとつ描くだけで人々は様々な解釈を並べ立てる。イウファンは、作品と観客のそのような形成がすなわち芸術の役割であると信じた。イウファンが点を「打った」としたら、ウウォンジェは点を「忘れた」。イウファンの点がキャンバスの中心から少し逸脱していたとしたら、ウウォンジェのアルバム<BLACK OUT>のジャケットの中の点はフォーカスが飛んでいる。そのぼやけた焦点のように、収録曲のミュージックビデオもやはり難解で抽象的だ。イウファンが徹底的に観客の反応を意図したのとは違い、ウウォンジェの点と映像は紛れもなくアーティスト自身を指し示した。しかし、音楽とミュージックビデオを鑑賞したヒップホップファンは、同じように各自の分析を並べ立てた。

 

音楽に自伝的なストーリーを盛り込むアーティストは多い。しかし、そのすべてが大衆の関心を得て熱い反応を起こすわけではない。人々がとりわけウウォンジェの話に耳を傾けることができたのは、何よりもメディアを通して、彼の以前の姿や心の内が予めよく知られていたおかげだ。デビュー前からしっかりと自身のスタイルとストーリーを確立したウウォンジェの音楽を十分に見聞きしていたからこそ、大衆はちょっとした説明がなくとも彼の変化と成長の文脈を理解し、新たなストーリーに注目することができた。これを認知しているかのように、アルバムと同名の最初のトラック'BLACK OUT'は、既存の'ウウォンジェ'のラップを崩すことから出発する。「何かおかしいぞ」と思うくらいの不明瞭なサウンドでざわざわするイントロノイズと空間系エフェクターの残響の中に埋もれたラップは、「過去の自分を忘れた」という感覚のアルバムタイトルとコンセプトにぴったり合致する。 

 

序盤の'BLACK OUT'と'R.I.P'が「過去のウウォンジェ」が死んだことを知らせる一種の宣言文だとしたら、'USED TO(Feat. CIFIKA)'は、そんな彼が「現在のウウォンジェ」にどのように至ったのかを知らしめる説明文に近い。ちょうどアルバムジャケットの点のグラデーションのように、ミュージックビデオ内の遠景から近景への変化が、また、モノクロからカラーに切り替わる画面と、平凡な肌色から鳥肌が立つような土色に変わるウウォンジェの顔の変化が、それを象徴している。さらに、大気に乗ってゆっくりと宙を舞うシャボン玉を映すミュージックビデオ、'Do Not Disturb (Feat. So!YoON!)'が現在のウウォンジェの在り方を反映するのなら、互いに全く異なる音色と個性を持ったフィーチャリングを率いた'JOB (Feat. Tiger JK & キムアイル)'が、現在のウウォンジェの音楽に対する哲学を象徴する。

 

アルバムを通して多彩に構成されているビートとフィーチャリング陣、ひとつのテーマのもと多様な観点とフローを混ぜ合わせたウウォンジェのラップも、このアルバムについてまわる良い評価の根拠である。他人の視線に映る一個人の現在は、ひとつの点のように単純かもしれない。しかし、彼を取り囲む文脈とその中に隠れたストーリーは、イウファンの点を取り囲む不均衡な空間の余白のように、ウウォンジェの点が広がって生まれる深さのように、決して単純ではない。 

 

 

 

<終>